「無職になったのに、前年の年収で住民税の請求が来た!」
「引っ越したのに、前の市区町村から住民税の請求が来た!」
「ふるさと納税の上限額を超えて寄付してしまい、住民税が全然減らなかった…」
といった住民税で焦った話、みなさんもあると思います。
この記事では、1級FP技能士である鎌形が、
- 住民税とは
- 住民税の計算方法と具体例
- 会社員とフリーランスの住民税の違い
- 住民税でよくある「つまずきポイント」
- 住民税の節税方法
について、わかりやすく解説します。
これを読めば「住民税の仕組み」がわかり、家計管理にもプラスになります。
ぜひ最後までお読みください。
住民税とは
住民税とは、私たちが住む都道府県や市区町村に納める税金で、地域の暮らしを支えるためにできています。
収入があった人が、前年の所得に応じて負担する仕組みで「前年の収入で税額が決まる」のが大きな特徴です。
まずは全体像から押さえましょう。
住民税の役割
住民税とは、地域の行政サービスを維持するための大きな財源です。
私たちが日々利用している道路の整備、公園の管理、上下水道、ごみ収集、消防・救急・教育や福祉の支援など、身近なサービスの多くは住民税により支えられています。
国に納める所得税とは異なり、住んでいる自治体に還元される税金のため、地域の生活レベルを支える「地元のための税金」といえる存在です。
住民税は誰がどこに支払う?
住民税の対象となるのは、前年に一定以上の所得があった人です。
たとえば、2025年の住民税は、2024年の所得に基づいて決まります。
逆に、所得が一定以下の場合「非課税」となり、住民税を支払う必要がありません。
非課税の基準は自治体ごとに細かい基準はありますが、収入が少ない人や生活保護を受けている人が該当します。
もう一つ大切なのが「どの自治体に住民税を納めるか」という点です。
住民税は「その年の1月1日に住んでいた市区町村に納める」というルールになっています。
たとえば、1月2日に引っ越しても、住民税は1月1日時点の住所地の自治体へ支払います。
住民税の仕組み(所得割・均等割)
住民税は、都道府県に納める「道府県民税」と、市区町村に納める「市町村民税」の2つからなります。
どちらも同じ仕組みで構成されており、税額は「所得割」と「均等割」の合計です。
さらに道府県民税には、利子割、配当割、株式譲渡所得割があります。
住民税には基準となる標準税率がありますが、都道府県や市町村の条例により、独自で税率を定めているところもあります。
- 所得割:前年1月1日〜12月31日の所得から各種控除を差し引いた課税所得に10%(道府県民税4%・市町村民税6%、政令指定都市は道府県民税2%・市民税8%)をかけて算出します。
- 均等割:所得に関係なく一律で課税される固定額で、多くの自治体では均等割額4,000円(道府県民税1,000円+市町村民税3,000円)と森林環境税(国税)1,000円の合計額です。
こうした2つの要素を組み合わせることで、所得に応じた負担と、地域サービスの維持に必要な一定額の確保が両立しています。
住民税の計算方法と具体例
住民税は所得税の確定申告のように自分で計算して申告する必要はありません。
ただし目安が知りたいときは以下の4ステップで求めると便利です。
ここからは、具体的に住民税がどのように計算されるのか、わかりやすく解説します。
住民税の計算4ステップ
住民税は以下の流れで計算します。
1. 所得を出す
給与収入や副業収入から必要経費を引いた額が所得になります。
2.所得控除を差し引く
基礎控除、扶養控除、社会保険料控除など、生活に関する控除を反映します。
3.課税所得に税率をかける
住民税の税率は全国一律10%です。
4.3で求めた所得割に均等割を足す
均等割は、収入の多い・少ないに関係なく一律で課税される住民税の固定部分です。
この流れに沿うだけで、住民税がいくらになるかを確認できます。
住民税計算の具体例
具体的な住民税の計算を見ていきましょう。
前提条件
- 年収:400万円(給与収入)
- 独身、扶養家族なし
- 社会保険料:60万円
- 均等割:5000円(仮定)
1.所得を出す
- 年収400万円の給与所得控除:124万円(概算)
400万円−124万円=276万円(所得)
2.所得控除を差し引く
- 基礎控除43万円
- 社会保険料控除:60万円
276万円−43万円−60万円=173万円(課税所得)
3.課税所得に税率をかける
- 標準税率:10%
173万円×10%=17万3,000円(所得割額)
4.3で求めた所得割に均等割を足す
- 均等割額:5000円(仮定)
17万3,000円+5,000円=17万8,000円(住民税額)
会社員とフリーランスの住民税の違い
住民税の納付方法は働き方によって大きく異なります。
会社員とフリーランスでは、徴収方式や納付のタイミング、手続きの負担が違うため、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。
ここでは、会社員の「特別徴収」とフリーランスの「普通徴収」の仕組み、徴収方法が切り替わるケースについて詳しく解説します。
会社員の「特別徴収」
会社員の住民税は「特別徴収」と呼ばれ、毎月の給与から自動的に天引きされます。
税額は6月から翌年5月までの12回に分割され、会社が従業員の代わりに自治体へ納めます。
自分で納付手続きを行う必要がないため、支払い忘れが起きないのが大きなメリットです。
給与明細の「住民税」欄に控除額が記載されているので、毎月いくら引かれているか確認する習慣をつけておくと安心です。
フリーランスの「普通徴収」
フリーランスや個人事業主は「普通徴収」となり、自宅に届く納付書を使って自分で住民税を納めます。
通常は年4回の分割納付で6月、8月、10月、翌年1月が支払期限です。
事業収入は変動しやすいため、納付時期に合わせて資金を確保しておくことが重要です。
普通徴収は手続きがすべて自己管理になるため、納付書の紛失や支払い忘れに注意しましょう。
切り替えになるケース
会社員でも、状況によって特別徴収から普通徴収に切り替わることがあります。
たとえば、
- 退職して無職になる
- 転職先が住民税の天引きに対応していない
- 副業の収入を普通徴収に分けて納めたい
などのケースです。
また、年の途中で退職した場合は、残りの住民税を一括で請求されることもあります。
自分がどの方法になるのか、転職・退職時には必ず確認しておきましょう。
住民税でよくある「つまづきポイント」
住民税について多くの人が疑問や誤解を抱きやすいポイントがあります。
「収入が減ったのに税金が高い」などよく聞かれる質問には、住民税の仕組みの理解が必要です。
ここでは、住民税に関する代表的な疑問とその答えをわかりやすく解説します。
「今年収入が減ったのに住民税が高いのはなぜ?」
住民税が「今年の年収」と連動しないのは、住民税が”前年の所得”をもとに計算されるためです。
たとえば、2025年度の住民税は2024年の所得で決まります。
つまり2025年に収入が減っても、その影響が住民税に反映されるのは翌年の2026年度です。
この仕組みを知らないと「収入が落ちたのに税金が高い」と感じてしまいます。
住民税は1年遅れで反映される制度だと理解しておくと納得しやすいです。
「扶養控除や医療費控除で住民税は下がる?」
扶養控除や医療費控除を適用すると、住民税は下がります。
これらの控除は課税所得を減らす効果があり、所得税だけでなく住民税にも反映されるためです。
ただし、所得税と住民税では控除額が異なる場合があります。
たとえば基礎控除は、所得税は48万円、住民税は43万円などです。
確定申告や年末調整で控除を申告すると、翌年の住民税額が減額されます。
医療費が年間10万円を超えた場合や扶養家族が増えた場合は、忘れずに申告しましょう。
「ふるさと納税で住民税は本当に安くなる?」
ふるさと納税で住民税は実質的に安くなります。
正確には「安くなる」というより「寄付金の一部が税金から控除される」仕組みです。
ふるさと納税で寄付すると、自己負担2,000円を除いた金額が翌年の住民税(と所得税)から控除されます。
たとえば3万円寄付すると、2万8,000円分が税金から差し引かれ、さらに返礼品も受け取れます。
ただし、控除額には上限があり、収入や家族構成によって異なるため、事前にシミュレーションで確認することが大切です。
住民税の節税方法(基本)
住民税は税率が一律でシンプルな仕組みですが、正しい制度を理解すれば一定の節税が可能です。
特に効果が大きいのは、
- 所得控除の活用
- ふるさと納税
- 経費計上(フリーランスや副業をしている人)
の3つです。
いずれも難しい手続きはなく、日常生活の中で取り組めます。
ここでは、初心者でもすぐに実践できる住民税の”基本の節税策”をわかりやすく紹介します。
所得控除を最大限活用する
住民税を抑える一番シンプルな方法が「所得控除をもれなく使う」ことです。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 扶養控除
- 生命保険料控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
など、日常的に適用できる控除が多くあります。
控除が大きくなると課税所得が減り、その結果として住民税も下がります。
特に、医療費控除や生命保険料控除は、気づかず申告し忘れるケースが多いので毎年見直しておくことが大切です。
ふるさと納税を活用する
前章でも触れましたが、ふるさと納税は寄付金額のうち2000円を超える部分が翌年の住民税から控除される制度で、節税効果が非常に高い方法です。
手続きも簡単で、ワンストップ特例制度を使えば確定申告が不要な人でも利用可能です。
ただし、上限額を超えると控除されないので、注意が必要です。
副業の経費を適切に計上する(フリーランス向け)
副業やフリーランスとして収入を得ている人は、必要な経費を適切に計上することで、住民税を抑えることができます。
経費を差し引くと所得が減り、結果として住民税の負担も軽くなります。
対象となるのは仕事に直接必要な支出で、
- 通信費
- 備品
- 消耗品
- 書籍
- ソフトウェア
などが代表例です。
レシートや領収証の整理を習慣化することで、無理なく節税につながります。
経費の管理は住民税対策としても有効です。
まとめ
住民税は「前年の所得で決まる」という特徴があるため、仕組みを知らないと疑問を感じやすい税金です。
しかし、基本は「所得割」と「均等割」で構成され、計算方法もステップに沿えば難しくありません。
会社員とフリーランスで納付方法が異なることも押さえておきたいポイントです。
また、所得控除やふるさと納税、経費計上などをうまく使えば、住民税の負担を抑えることもできます。
この記事をきっかけに、自分の住民税の仕組みを理解し、家計管理にぜひ役立ててみてください。

